バングラデシュ第2の都市チッタゴンに到着した我々はまずはホテルへ向かう。
(おっと、ここで最初に言っておくが、我々がバングラデシュに行った3回は
それぞれ、「大規模デモ」「大規模ストライキ」「ラマダン」の日にクリティカルヒットした。
だから、これが日常だと思わないでくれ。普段は、非常に非常に平和なんだよ。)
空港の建物から出ると
「ブブー!!」「パッパァァァ!!」「ビーーーーーービーーーーーー!!」「ファンファン!!」
車のクラクション音が、ものすごい!! びっくりするくらいの音量と音数!
「う、うるさい!!!!!!!! 何事!?」
延々鳴り続くクラクション音。驚いていると
「ん? 普通。慣れる。慣れる。」と、首都ダッカから合流したバングラデシュ人のDipu(ディップ)が言う。
ディップは、今回の支援活動を仲介している神戸の会社の社員だ。過去に埼玉県に住んでいたことがあるらしく日本語は少しだけ話せる、英語は話せない。基本的にはベンガル語だ。ディップは丁度いい具合に楽天的な性格で、柳田とめっちゃ気が合う。
空港で待機していたワゴンに乗り込むと「車のカーテンを閉めている。絶対にカーテンを開けないこと。顔を外に出さないで。」と言われた。大規模なデモが起こり、人々が興奮状態だとのこと。外国人だと分かったら、攻撃される可能性がある、と言われた。
「とんでもねぇ……。」
支援に来て、襲撃されるとか辛すぎるだろう……。
空港の敷地から街中へ車は進む。
(ここで、紹介しておこう、これから我々の車を運転してくれる運転手“ロックマン”を。彼は、とにかくすごい。何がすごいかは、読み進めてもらいたい。とても無口な彼がどんな人なのか楽しみにして欲しい。)
街中に入った。
「ブブー!!」「パッパァァァ!!」「ビーーーーーービーーーーーー!!」「ファンファン!!」常に鳴っている。その理由が分かった。
車同士の間隔が近っっっっ!!!! 隣の車との距離、おかしい。手を出したら、隣の車に触れる距離。ロックマンも常に「ビー! ビビビー!!!」とクラクション連射。
「ハードすぎる……。」
このクラクションは日本の「危険ですよ」を表現しているのではなく「俺はここにいるぜ!ぶつかんなよ!!!」という存在証明的合図。
そして走っている車の多くは「日本車」。中古の日本車は「壊れにくい」ということで、非常に人気だそうだ。
柳田:「なぁ、やまさんよ。日本で働いて引退して“おらぁ、隠居だな”ってシンミリしていたら、バングラデシュに送られて、中古車としてここで再活躍だよ。“おらぁ、まだまだイケるぜ!”みたいなね。」
やまさん:「“若ぇもんには、まだ負けねぇよ”って感じでクラクションが生き生きしてるね。」
柳田:「だな。日本では、ほぼ使われることはないクラクションが、こんなに使ってもらえるなんてな。クラクションも生まれてきた意味を知ったな。」
やまさん:「クラクション音が、何だか心に染みてきたわ。」
柳田:「だな。おっさん(中古日本車)たち、叫べ! 思いっきり叫べ!!」
と、車の中でこんな会話をしながらバングラデシュの交通事情をすんなりと受け入れることが出来た。
混み混みの状況に痺れを切らしたロックマン。
いきなり、列から出て……「え~!!!! 対抗対向車線だよーー! をいをい!!!! やめて~!」車内はパニック。
「正面から車来とるがな!」
「あかんやろ!あかんって!」と叫ぶ我々を気にもしないロックマン。
クラクションをバンバン叩きながら、すげースピードで爆走。
そのスピードにより、さっきまで気づかなかった道の状態を実感。
すげーデコボコ!!! 凸で車が跳ぶ!
ぼいんぼいん跳ぶ。
「ぎゃ!ぎゃ!」
「首がぁ!!!」
もう、壮絶。

ホテルに着いたらクタクタだった。一応、首は無事に体の上にくっついていた。
ホテルは当時この地区でかなり高級だったホテル(Avenue Hotel & Suites)。
(異様に広いな……。)
この地で、柳田がどんなことをしてきたのか……乞うご期待。
つづく